第1章 恋煩い 【SN】
Aside
「い…今のはカウントしませんからねっ」
そう言って、顔を真っ赤にしたニノが部屋を出ていくのを見送る。
隣に未だ残るきみの温もりとかおり。
しまった……キスなんかするんじゃなかった…。
唇を離した瞬間、赤く染まってゆくニノの顔が脳裏に蘇る。
キスなんてニノとは、おふざけで何回かしたことはあった。
でも…あんな顔を見たのは初めてで。
振られてしまった今、この想いから解放されると思ったのに…。
唇を尖らせてみせる拗ねた顔。
酔っていつもより水膜の増した瞳。
無防備な寝顔。
きみの全部が俺のことを掴んで放してくれない。
『…俺のこと好きになってくれてありがとうっ』
そんなこと言ってくれるなんて思ってなかった。
…もっと好きになっちゃうよ……?
それでも……やっぱり俺じゃだめなんだよね。
あと少し……もうちょっとでいいから好きでいさせて?