第17章 末っ子気質
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30分、駅前で黒尾を待つ。
仕事終わりの黒尾はスーツでお固く登場してきた。うーん、普段のイメージから想像出来ん。
「おーう、木兎。まおちゃんとどうしたのよ」
「…覚えてない」
「ホント馬鹿かよ…あんなにいい子、いないんだから大切にしなさいよ」
「…分かってんだけどさ…」
あまり詳しくは聞いてこず、そのまま少し話しながら飲み屋街に入る。
ネオン。既に飲んだくれたおっさん。甘ったるい声でベタベタしてくるガールズバーの姉ちゃん。ちょっとイキってる若い兄ちゃん。
「今日は混んでんな、あー、華金か」
「あー♡ねえ、お兄さんたち、アタシのお店来ない?」
いつもならそんなでもない、ガールズバーの姉ちゃんがうざったい。
気が立ってるからか、余計そう思う。
さすがに異変を察知した黒尾が、やんわり断る。
「あー、ごめんね、そーゆー気分じゃないから」
「えー…お兄さんたちカッコイイから一緒に飲みたいなあ♡なんて思ったのにー」
「うぜえって」
自分でもびっくりするくらい冷えた声。
その声を聞いてついてくる女なんているはずもなく、そのまま俺らを置いて他の男のところにいった。
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