第5章 この女、冷酷 冷淡 冷徹 にして最狂
私を慕ってくれたあの子はまだ生きているだろうか。
あの子を私の手で殺したくなかったから、同期じゃなくて良かった。
『姉さんっ、僕も弾けるようになったよ』
今でもあの子の声が耳裏に残って離れない。
一緒に弾いたこの曲は私にとってあの子そのものだ。
「ーー♪〜♫〜♫…」
曲が終わり、部屋が静かになる。
なんとも言えないこの感情の名を私は知らない。
「生きてると良いな…いつか会えたらいいね」
バイオリンをケースにしまい、私は汗を流すためにお風呂へ向かった。
「ふぃ〜、さっぱりしたぁ〜!!」
ガシガシと髪をタオルで拭きながら、私は時間を確認する。
あと30分ほどで夕食の時間だ。
部屋でまったりするのはここに来て初めてなので、何をしていいかわからない。
なんて思ってたら戸をノックされた。
「あ、クレナさん!どうされました?」
「暇だったから来てみた〜!」
「私も丁度暇だったのでタイミング最高です!」
なんで話しながら彼を部屋招き入れる。