第5章 この女、冷酷 冷淡 冷徹 にして最狂
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何度も目をこすった、それでも目の前の幻覚は消えない。
暇だったからみんなで訓練場に来たのだが、白いものが飛び回っている。
訓練場全てを使って、壁に設置された的を動きながら射ている。
最後の的を射たのか、それはようやく床に着地して動きを止めた。
やっぱりアオメだったか……
声をかけようとして、彼女に一歩近づこうとしたが俺はその足を戻した。
久しぶりに恐怖というものを感じた。
アオメは真っ白なパーカーを着て、フードを深くかぶっているので顔はうかがえない。
だか、凄まじい殺気を彼女は纏っていた。
彼女を捕まえた日にこんな殺気を感じなかった、力が計り知れない…
「っ……っ!?……」
声もでないし、ガラにもなく体が震えているのがわかった。
不意にビクッと動いたアオメはゆっくりと顔を上げながらこちらを見た。
ー!!!!!!
俺はあいつを知らない、あいつはアオメじゃない、そう思ってしまうほどだった。
真っ白な肌とは対象に真っ黒な瞳は吸い込まれそうなほどの闇を映す。