第5章 この女、冷酷 冷淡 冷徹 にして最狂
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「差別は嫌いなので、分け隔てなく殺します」
口元に笑みを浮かべながらアオメさんはそう言った。
彼女の考え方はもちろん理解できるが、
私には到底実行しようとは思えない。
主を殺すのは慣れたが、無関係の人を殺すというのはしたことがない。
しかしアオメさんはそれが当たり前かのように話していた。
それがスペルタールでの教訓なのだろう。
確かだがスペルタールでは『自分の邪魔をする者は誰でも殺せ、暗殺に差別はいらない」と教えられていたはずだ。
私はまだ暗殺者に、黒に染まれてないのだろうか…
そう思った時いきなり私の名を呼ばれた。
「メルロさーん⁇なんでまた毒入ってるんですか?」
どうやら今日の晩食であるハンバーグを口にしたようだ。
「フグの毒でも気づくんですね…」
「生臭いですもん、青酸系とかも消毒くさいですけどね」
そう言ってハンバーグを食べている。
それは普通の元気の良い男の子みたいだ。
16歳にして彼は何を見て育ち、何をして生き、何を体験してきたのだろう。
少なくとも私が見てきた甘い世界とは比にならないほどの黒い毎日だろう。