第12章 復讐の始まり
「…で、体は大丈夫なのか?」
「おかげさまで、ありがとうございました。……それでもう分かってると思うんですけどずっと性別を偽っていました。俺は…私は女です」
偽っていた声も戻して、私はシルダさんを見てそう言う。
「女だと舐められると思って男として入ろうと思いました。ずっと騙しててすみません」
腰を折って、深く深く頭を下げた。
もしかしたら追い出されて、1からやり直しになるかもしれない。
そんな思いが脳裏を掠め、自分の息が少しだけ荒くなるのを感じた。
しかしそんな考えとは裏腹に、シルダさんの言葉は優しく温かかった。
「ラリー、顔を上げてくれ。……今まで辛かったな、1人で抱えて…」
そう言って私を優しく抱きしめてくれた。
これでまた私は彼らを敵にしづらくなった。
なんだかもう分からない。
なぜ父とタナトを殺すためだけにこの人たちを本当に傷つけないといけないのか。
でもそれでも殺しをやってきた私にここで戸惑い躊躇したりする権利はないのか。
そんな気持ちがせめぎ合い、辛くなり目の奥が熱くなった。
それでもシルダさんの前ではもう泣きたくない、これ以上甘えたくない。
その気持ちが強くて、涙はおさまったが彼の手から逃れることはできずに数分間抱きついていた。
「せめて、この部屋にいる時ぐらいは気を抜いてていいからな。これからは俺も支えてやるから。
やっぱり男だけの環境だから女ってばらすとなると…分かるだろ?これからもそれは内緒にしておいた方がいいよな…」
それに私は頷くと、シルダさんはぐーっと伸びをした。
「でも良かったよ、元気になって。宿に行った時のお前の弱ってる姿見てめっちゃ焦ったんだからな?」
「すみません…あんな風に怪我して動けなくなったのなんて数年ぶりで…自分でもびっくりしました」
本当にいつぶりだろうか…あんな痛みを感じたのも久しぶりだった。
「よし、きっとまだまだあいつらラリーと話したそうだったから部屋に呼ぶか!」
それから私達はまた夜更けまでいろいろなことを話し合った。