第12章 復讐の始まり
「…人を殺す仕事をする俺らが仲間の死を悲しむのは悪いと思うか?」
いつもの威圧的な声ではなく、仲間の死を惜しむように悲しそうな声をしている。
「悪くはないとおもいます。でも…俺らは罪のない人を殺してるから俺らを恨むのはいいと思います。
でも俺らは殺して、殺されている。そこには大きな差がある。俺らは決して被害者ではない、その意識は必要だと思います」
私がそういうとタナトさんはこちらに向き直り、不意に私に抱きついてきた。
「お前が毒を抜いてくれたおかげで助かった。ありがとう。すぐに迎えが来るだろう、3人で帰るぞ」
そう言ってる顔は見えないがいつもの厳つい顔ではないのは確かだ。それと懐かしい匂いがする。
この匂いは……ステラさんの匂い。
そう思った瞬間、彼は私から離れて自分の傷口に包帯を巻いていた。
洗剤が一緒とかそういうわけではない、ステラさんそのものから香る優しい匂いを間違えるはずがない。
「…ステラ ローレンス」
私はカマかけのつもりで口に名を出す。するとタナトさんは一瞬だけ手を止めた。
「いきなりその名を…どうした?」
おかしなほど視線を動かさず、包帯を巻き続ける彼の問いに私は「なんでもありません」と答えた。
頭をとある予測がかすめるが、それを証明するためには色々とおかしな点が多すぎた。
まさか…ね。あるはずがない。タナトさんがステラさんだなんて。
私はそう言い聞かせながらも、早まる鼓動は止まらずにずっとタナトさんを見ていた。
その後の夕方にシルダさん達が私たちを迎えにきた。
普段、血を流すことのない私たちが傷だらけなことにかなり驚きつつも持ってきてくれていた傷薬で処置してくれる。
「シルダさん、毒にやられて体に力が入りません。馬車までの移動手伝ってもらえますか?
俺はそんなに怪我をしてないので薬は必要ありませんよ。毒もいつか抜けます」
そういうと彼は私を軽々しく持ち上げて馬車に寝かせてくれた。