第12章 復讐の始まり
「ここに洗濯物置いておきますね。…寝てますか?」
未だ壁の方を向いて動かない彼の背中に声をかけたが、返事は返ってこないので寝ているようだ。
あなたのお兄さん、私が殺したんですね…。
ごめんなさい、覚えてないや。
今更ながらの感情だし、私が抱くことも許されてないのかもしれない。
「シルダさん。おやすみなさい」
彼の頭に手をつけたが”罪悪感”が邪魔して頭を撫でることができなかった。
私はもう戻れないとこまで来てるんだ。
彼らに甘えてはならない、さっき決意したのに…。
悪は最後まで悪らしくいかないと。やるしかないんだ…寝る時間まで情報収集しようかな。次はトーンさんに聞こう。
トーンさんの部屋にいます、と置き手紙を書いてから私は部屋を後にした。
シルダside
「殴ってください、絶対。気がすむまで、全力で」
ラリーがいきなりそう言ってきた。
恨む相手が同じで自分もしたいからそう言った、怒りでそう言った感じはなかった。
なんだ…矛盾するような感情が混ざっているかのような……。
心にモヤモヤを抱えていると、ラリーは洗濯物を取りに行くため部屋を出て行った。
1度上半身を起こしてよく考えてみる。
顔を見ていたわけでもないが、ここの長として人の感情を読み取る能力は高めてきたはずだ。
そう、あれは自己嫌悪と自信…。
でもなぜラリーがあのタイミングでこの感情を抱く?
そんなこと考えていたら外から足音が聞こえてきたので、また寝転がる。
「洗濯物ここに置いておきますね…寝てますか?
……シルダさん、おやすみなさい」
ベッドがぎしっと軋み頭に優しく手が触れた…がすぐに離れたと思ったら少ししてラリーは部屋を出ていった。
どうしたんだ…何を今躊躇ったんだ…?
おやすみ、と言った彼の声はなんだか悲しそうで耳に残る。
ベッドに手足を投げ出して、俺は1つ大きなため息を吐き出した。
なんだか最近、ラリーが気になってしょうがない。
最近までは新人だからと思っていたがそうではなさそうだ。
憧れか、他のものか…。
「気持ち悪りぃな〜。勘弁してくれよ」