第10章 突然の別れ
「そんなミカにいい知らせ。…キングダム商会のアジトが分かったよ。ミカの回復を待ってから叩きに行こうと思う。…ついてきてくれる?」
私は彼の手を取り、目を見据える。
狙われたし、撃たれたことももちろん、目の前で死なれたこともトラウマだろう。
「ーあったりまえでしょ?お姉ちゃん」
でもそんなのは杞憂でしかなかった。
彼の目はちゃんと未来を、希望を見ていた。
それから少し話をしてから私は病院を後にした。
そして依頼を3件ほど片付けてルータスへと向かう。
「アオメッ!…ってどんな格好で来てんの⁉︎」
「あ、すみません。依頼片付けできた帰りなので…あとこれ届けにきただけです」
私は血がつかないように袋に入れてきた書類をクレナさんに渡した。
「あ、なるほど。ありがとう!ちょっと待ってて。…俺も持ってくるから」
そう言って彼は大量の書類と一枚の手紙を持ってきた。
「メルロからのと情報ね。それじゃ、俺らも案件片付けてくるから」
「分かりました。お気をつけて」
手を振りながら家の中に入るクレナさんを見届けてから私は家へ帰ってすぐに資料を広げた。
【キングダム商会】
スーダン マテラターニを会長として約10年ほど前から権力を振るっている商会。
表向きは市馬の経営やボランティアをしているが、裏では売春、殺人、窃盗をしている。
規模は大きく世界中に会員は1000以上。
現在のアジトは【フェルーリタストル】という街にある。そこにいるのは約300で、会員等の住処でもある。………………………」
様々な情報が書かれている中、初めて知った情報をメモにとる。
【スーダン マテラターニ】
殺人などの犯罪行為は全てスーダンの指示。
行為の理由はほとんどなく楽しみの為にやっているため、たくさんの人から反感をかっている。
さすがね…やっぱ恨まれてんのか。
なんて思っていたら私のことが書いてる情報もあった。
スーダンの家族はたった一人の娘を除いて全員死んだ。当時のことをスーダンは【悲劇の喜劇】と呼んでいる。
家族が全員死ぬという悲劇、それは分かる。
だが喜劇と例えるのはあまりにも不相応だ。
「血も涙もないやつだ。理屈なんか通るはずがない…」
自分にそう言い聞かせ、怒りを押し殺した。