第10章 突然の別れ
その次の日、まだお姉ちゃんは目を覚ましていなかった。
仕事もあるので、心配ではあったがいつものように外に出る。
「ミカゲさん、アオメさんは…?」
「起きてないです。そっちは…」
「状況は話したけど、さすがに『あ、そうですか』とはならないよ。
ステラも相当恨んでるかね。長年の仇だし…」
そんな気まずい空気の中、僕達の仕事は始まった。
その後お姉ちゃんが起きたのはお昼ごろだった。
昼食を取っている時彼女も食堂に来た。
「昨日はご迷惑おかけしました。
そしてご迷惑ついでにもう1つ。私はここを出ようと思います。私がいるとステラさんもキツイでしょうし…」
いきなりそんなことを言うからすぐには理解できなかった。
「マスターにはもう話をつけました。
了承を頂いたので、これが最後のご飯です」
そう言って席に着くと、シェロさんから料理を受け取っていた。
「そ、そんなっ!突然すぎるよ!
きっとステラの誤解も解けるよ。そしたらみんなで仇を打ちに行けばいいじゃん!?!?」
そう言ったのはクレナさんだった。
しかし、お姉ちゃんは微笑みながら首を振る。
「皆さんも分かっているでしょう?
…こうなってしまってはチーム戦何ぞ出来ません。フリーランサーに戻ります」
「なら僕もついて行くっっ!お姉ちゃんと一緒に行くよ」
僕もそう言ったがお姉ちゃんは無言で席を立つ。
「シェロさん、ご馳走様でした。
それではみなさん…さようなら。今までお世話になりました。」
深々と礼をしたお姉ちゃんを捕まえようと、駆け寄るがもうちょっとのところで交わされる。
そして彼女はなにかを口パクで言った。
あっと思った時にはもう廊下を走り出しているのを追う。
部屋に入ったようなので扉を開ける。
が、お姉ちゃんの姿はない。
代わりに全開に開かれた窓から入る風で揺れるカーテンが、虚しさを感じさせた。
「おいていかないでよ、せっかく会えたのに…」
後ろから来たメルロさん達も無言で僕の肩をたたくだけだった。