第8章 忍び寄る恐怖と出会い
それに気づかないふりをしていたら、彼女は枷をいじり始めた。
いったい何をしているのか…と思っていたらそれはいとも簡単に外れる。
「鍵の形状と、ミカの動作をなんとなく覚えたのでこうすると外れると思ったんです…よっと!」
驚くようなことを当たり前のようにやって遂げた器用な彼女が、次にした行動は正反対のことだった。
まさかの力任せに枷の穴を広げる、という行為。
いくらか広がった枷を再び付けて、私が楽になったことを確認する。
「万が一の場合はここを押さえながら抜いてください。
あと、彼をあまり刺激しないでください。躊躇なく人を殺すのでお気をつけを」
一層声を潜めて彼女は耳元でそう言った。
あの家でも思ったが、アオメさんが恐れるなんて尋常ではないと思う。
ステラやクレナに聞いた話、アオメは仕事中は笑っていることが多いと聞いていた。
しかし、今回彼女は仕事中に笑っていなかったからそんな余裕がない相手をを相手にしてるようだ。
その忠告に頷くと、彼女は部屋を出て行った。
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それからいくらか時間が経った頃、またしても足音が聞こえた。
いい匂いと共に部屋に来たのはアオメさん。
「遅くなってすみません、朝ご飯です」
そう言いながら枷を外してくれたので、早速ご飯を頂戴する。
食べながら、アオメさんの横顔を見るとなんだか青白いし元気がないようだ。
「モグモグ…どうされたんですか?モグ」
食べながら、深い意味があると取られないように装って聞いてみた。
「ん?…あぁ、ミカを怒らせたわけではないんですが機嫌をそこねたかもです」
「私は結構危うい状態ですか?モグモグ」
私がそう言うとんーっと困った顔をした彼女は正直に頷いた。