第8章 忍び寄る恐怖と出会い
「はい、お待たせ。ハーブティーだよ」
渡されたマグカップを除いて異変がないかを確認する。
「大丈夫だよ。僕を信じて?」
「スペルタールでは自分で用意したもの以外は食べてはならないって教わらなかった?」
「そんなことわかってるよ。でもお姉ちゃんも馬車の中で誰かが作ったの食べてたもの!!」
そう言いながら彼は上品に紅茶を飲んだ。
「じゃあ馬車を襲ったのはミカゲ?」
「水臭いな〜。昔みたいにミカって呼んでよ!…じゃないとあの子殺すよ?」
またピリピリとした殺気を私の肌は敏感に感じていた。
この子ならそれだけの理由で人を殺しかねない、それは昔から知っていた。
「ミカ、なんのために私たちを攫ったの?それに家に戻らなきゃ主人に怒られるんじゃない?」
「お姉ちゃんと戦った時、凄く強かったから。ここ数年前、僕と3秒以上戦えたのなんて片手にも満たないもの。
面白そうだから連れてきたの。
で、あそこの主人は殺してきたから大丈夫。もともと依頼されてたしね」
攫った理由が面白そうだったからなんて正気の沙汰とは思えない。
いや、もともと彼は狂気的な子だった。
ミカにとったらそれは至極まっとうな意見で理に適ってるのだろう。