第8章 忍び寄る恐怖と出会い
馬も従者も殺られてるか…。
「我々を狙ったんですかね…」
「そう思ったんですけど、彼は私たちの素性を知らないようでした…」
馬車から出てきたコルトさんは顔をしかめながらそう言った。
あれ…マトリさんとアリスさんは?
私は中を覗くと、彼らはリズムの良い寝息を立てながら盛大に寝顔を晒していた。
「嘘、でしょ…今ので起きないの…?」
私は思わず失笑しながら、彼らの頬をツンツンしてみた。
「これでも起きないんですね…もう諦めるしかないか」
そう言って呆れているコルトさんは話してくれた。
なんでも彼らは一度寝ると10時間は絶対に起きないそうだ。
だからいつも仕事の始まる5時から10時間前である19時に寝てるらしい。
「こんな面倒くさい人をなぜ雇ったかというと、天才的な情報収集能力と本気を出すと実は強いからでしょうね」
戦闘力の方は知らないが、情報収集能力の方はよく分かっている。
「とりあえず新しい馬車に取り替えなければなりませんね」
私達は1人ずつ彼らを背負い、しばらく歩いた。