第3章 仮面の裏◻︎
「俺はここに生まれてきて良かったと思うっすよ!ここに生まれてきてなかったら京治さんと出会えてなかったすもんね!」
「また調子のいい事を」
さっきの重たい空気が嘘だったかのようにスガワラさんの明るい声でつい笑ってしまった。
「俺、意外と京治さんの雰囲気好きっすよ?なんか奥が掴めない感じ?自分を殺してまで生きる感じっすかね。」
「それ褒めてるの?」
「半分褒めてるっす!」
「それ褒めてるって言わないから」
「いや〜でも高校生でこんなに冷静で視野が広いやついないっすよ?こりゃあ組長も手放したくないわけだわ」
「俺しか跡継ぎいないからだよ。所詮、俺なんて組の犬にしか考えれない」
上から命令されたものは首を縦に振ってそつなくこなしていた。
周りから見れば聞き分けのいい御利口な男のコ。
本当はそんなんじゃない。
首を横に振ってしまえばいくら組の大事な1人孫息子だとしても何をされるかわからない。
お前は将来の組の責任者なんだぞ。
そんな根性無しはいらない。
きっとそう言われて詰められるだろうな。
それが怖いから、手のひらを返されたら怖いから首を横に振ることができない。
「いつまで利口な孫を演じればいいのかな…」
「いつまでもっすよ。組長の息の根が絶えるまで、従順な孫でいないとダメっすよ」
「…だよなぁ」
あー。あの爺のことだからあと10年は生きていそうだな…
いや、その前に誰かに殺られる可能性も無くはない。
でも爺が殺られたら俺にも被害が加わるな…。それだけじゃない組全体に被害が及ぶかもしれない。
解体せざるを得なくなることも。
そしたら俺が最高責任者になってしまってこの世界から消されるかもしれない。
「ストレスで死にそうだよ」