第3章 仮面の裏◻︎
あれから何本打ったのか分からないくらいに自主練に付き合わされて8時になったから強制的に終わりにした
あんなに動いてるくせにまだ打ち足りないのか、木兎さんは肩をぶんぶん振り回してる
「あっ!!やっべ忘れてた!!!」
急に大声を出したと思えばせかせかと着替え始めた
「赤葦!今日 黒尾とカラオケ行く予定入ってんの忘れてたから先行くな!!!じゃーなぁ!!!」
「あ、はい。お疲れ様です」
嵐みたいだ。というか、黒尾さん相手に予定すっぽかすなんて…黒尾さん怒ってるだろうな
今日は帰り1人か
少し寄り道をして帰ろう
外を出たらもう空は暗くてビルの電光板やら電灯やらがキラキラと眩しい
繁華街に入って少し歩いたところで路地裏に入る
暗くて不気味な雰囲気の中レトロな扉を開ける
「おっ!京治さん!!ちわっす!!」
「開店前にごめん」
「大丈夫っすよ!京治さんが開店前に来るのなんてもう慣れっこっすから!!」
そう言いガハガハと大きく笑うここのオーナー
スガワラさんっていう人だ色素の薄い髪に白い肌。烏野の2番さんに似ている
この店は俺の組が経営している系列店で、オーナーは俺が小さい頃から俺の側で色んなことを教えてくれた
マナーとか夜のこととか俺たちの身の危険とか
全てこの人に教わったと言ってもいいくらいだ
スガワラさんが出世してからもこうして店に来る。バーだから部活帰りの開店前に来て世間話をしている
「いつものお願い」
スガワラさんは言わなくても分かってるべと言った
俺は1番端からひと席空けて座る。これもいつものことだ
「京治さん、そろそろ本気の相手見つけたらどうすか?」
「そんなもん来年には強制的にできるでしょう」
「そう言うと思ってましたよ」
「別に、女には興味ないし…それよりも跡継ぎの方がかなり重たい」
「京治さんなら大丈夫っすよ。なんせ俺が育てたと言っても過言じゃねぇからな!!」
「過言じゃないの」
「うわっ冷えっすね!!」
ほんと、この空間好きだ。落ち着く。心が浄化されていくような感じ