第3章 痛みと引き換えに
時間も経ち、結局柚葉は渋々店に帰ることに頷いた。
今あんていくの外、僕らはそこで別れようとしている。
ただ、さっき感じた寂しさは僕の中に置いておくと決めていた。
兄さんを助けるのは僕の役目だし、
彼女は別に僕がいなくても、やっていける。
思い出すとまたどうしようもなく寂しかったが、
仕方ないと思い込んだ。
「あぁ憂いわ。帰りたくない。」
「この後に及んでもまだ帰りたくないんだ…」
「うん。前よりか怒られるのは慣れた。怖いのに変わりはないけどね」
「それ慣れてないじゃん」
「そだね」
短い会話が途切れ、沈黙が漂う。
でも柚葉とのこの間は、嫌いじゃない。
ふいに、柚葉は考える様にして顎に手を当て、
そのまま押し黙ったあと、顔を上げる。
そして何か言いたげに、綺麗な眼が僕を見た。