第2章 脱獄者
「ところでリオくん」
「はい」
「これから住むところは決まっているのかい」
「…ぁ、また適当に住まい探しをしようかと」
もちろん、全くめどは立っていない。
コクリアに行く前のところは、捜査官がマークしている筈だし。
「それなら、私が世話を見てあげよう」
「……えっ、」
「ただ、きっちり代償は頂くよ」
思いがけないない提案に、目を見開く。
行き先のない僕の、住むところも用意してくださるなんて。
初めて会った筈なのに、こんなに良くしてくださるなんて。
芳村さんのその心の広さは、何が理由なんだろう。
僕は、芳村さんに甘えることにした。
「ありがとうございます、本当にありがとうございます…!」
うんうんと頷く芳村さんは、
「代償は、あんていくでの勤務だよ」 また笑って言う。
「…!?だ大丈夫ですか芳村さんリオすごいコミュ障なんですよ」
…あまりいい気はしないけど、柚葉の言うことは大体正しい。
「大丈夫。初めてやる子はみんなそこから始まるんだよ。
最初からできる子はいない」
「ほ、ほんとうかなぁ…私心配だよリオ」
僕を見てわざとらしくおろおろする柚葉。
でもまぁ、ちゃんと心配してくれているんだろう。
僕は苦笑してみせる。
そういえば、本当に柚葉はどうするんだろうか。
お店、本当に帰れないのかな。
「___それでいいかい、リオくん?」
「はい。よろしくお願いします」
こうして、僕の住まいは確立された訳だが。
「____……柚葉」
「…リオ。私やだなぁ帰りたくない」
あれだけ言いつつも、彼女の場所はそこなのだ。
ソファーに体育座りをして嫌そうにぼやいていても、
柚葉には帰る場所がある。
帰る場所。
芳村さんの厚意で物理的に生活が出来る場所はある。
でも、足りない感覚。
隣にいたのは、いつも兄だった。
そしてコクリアを出てからは、柚葉が居てくれていた。
その柚葉にも居場所はあって、
今、また僕は独りになる。
…あぁ。
寂しいんだ。