• テキストサイズ

Call me. 【東京喰種 JAIL】

第2章 脱獄者





「ところでリオくん」
「はい」

「これから住むところは決まっているのかい」
「…ぁ、また適当に住まい探しをしようかと」

もちろん、全くめどは立っていない。
コクリアに行く前のところは、捜査官がマークしている筈だし。

「それなら、私が世話を見てあげよう」
「……えっ、」
「ただ、きっちり代償は頂くよ」

思いがけないない提案に、目を見開く。
行き先のない僕の、住むところも用意してくださるなんて。
初めて会った筈なのに、こんなに良くしてくださるなんて。

芳村さんのその心の広さは、何が理由なんだろう。

僕は、芳村さんに甘えることにした。
「ありがとうございます、本当にありがとうございます…!」

うんうんと頷く芳村さんは、

「代償は、あんていくでの勤務だよ」 また笑って言う。

「…!?だ大丈夫ですか芳村さんリオすごいコミュ障なんですよ」

…あまりいい気はしないけど、柚葉の言うことは大体正しい。

「大丈夫。初めてやる子はみんなそこから始まるんだよ。
 最初からできる子はいない」

「ほ、ほんとうかなぁ…私心配だよリオ」

僕を見てわざとらしくおろおろする柚葉。
でもまぁ、ちゃんと心配してくれているんだろう。

僕は苦笑してみせる。

そういえば、本当に柚葉はどうするんだろうか。
お店、本当に帰れないのかな。


「___それでいいかい、リオくん?」
「はい。よろしくお願いします」





こうして、僕の住まいは確立された訳だが。


「____……柚葉」
「…リオ。私やだなぁ帰りたくない」

あれだけ言いつつも、彼女の場所はそこなのだ。
ソファーに体育座りをして嫌そうにぼやいていても、
柚葉には帰る場所がある。

帰る場所。

芳村さんの厚意で物理的に生活が出来る場所はある。

でも、足りない感覚。
隣にいたのは、いつも兄だった。

そしてコクリアを出てからは、柚葉が居てくれていた。

その柚葉にも居場所はあって、
今、また僕は独りになる。



…あぁ。



寂しいんだ。
/ 46ページ  
スマホ、携帯も対応しています
当サイトの夢小説は、お手元のスマートフォンや携帯電話でも読むことが可能です。
アドレスはそのまま

http://dream-novel.jp

スマホ、携帯も対応しています!QRコード

©dream-novel.jp