第2章 脱獄者
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様々な道具で立てなくなる程に痛めつけられても、
僕はキジマの望む答えを出せずにいた。
自分をこんな体にし、部下もたくさん殺したという喰種、
“ジェイル”。
どんなに問われようと、その名に覚えは無かった。
「…ふむ、ここまでしても思い出さないか」
「…っ…しら…ない……」
そもそもなんで僕なのだろう。
「なんで…僕を疑うんだ」
「何故?それでは質問を変えよう。」
「___君の兄は“ジェイル”か?」
「……!?」
何故、僕に兄がいることを知っているんだ。
僕は兄の事は話していない。
「兄をどうした…」
「ここのVIPルームで待ってもらっているよ。
…もう一度聞こう。」
「君の兄はジェイルと呼ばれていたか?
捜査官を大量に殺す虐殺者だったか?」
「ち…違う!兄さんはそんな事しない!僕らは関係無い!」
「その兄が自ら答えた。自分がジェイルだと。
だから弟を解放しろ、ともな」
「…!」
兄さんの姿、声、優しい表情が脳裏に甦る。
いつも僕の傍にいて、守ってくれた。
今だって僕を守ってくれている。
クヒ、と薄気味悪い笑いをあげると、
「君がジェイルなら早めに言った方がいいぞ
…兄さんが大変な事にならない内に」
と言って部屋を後にした。
カチ、と錠のかかる音がし、僕は独りになった。
どうする。
どうすれば兄さんを助けられるんだろう。
僕らがジェイルに本当に関係しないと知ったら、キジマは……
とにかくここから出れさえすれば………
そもそも僕の嚇子は強くないし、大した使い方もできない。
この監獄を破るのも簡単ではないし、
…兄さんのいるところだってわからない。
考えて分かったのは、ここから出るには
まともな方法じゃ上手く行かないという事実だけ。
出れさえすれば。
気が滅入ってきたときだった。
地鳴りと共に、大きな破壊音がしたのは。