第9章 SIX
「なー、行きとーない」
「はいはい」
近付いた途端、リアルに聞こえてくる話し声。
あのバカ、ここまで来てまだ駄々捏ねてんのかよ。
「なーぁ、
「約束しましたよね、諦めて下さい」
「違ゃうて!他の奴らはいつ来んねんって聞こうとしたんや」
「・・もうじき来ますよ」
「・・・見捨てられたんかな、俺」
おいおい、ヨコ・・
それ、可愛すぎ。
「大丈夫ですよ。
みなさん来ますから」
「・・なぁ、どうしても行かんといけん?」
またかよ。
だが、地味子の表情がおかしい。
真剣な眼差しでヨコを見てた。
ズキッ。
・・何や、コレ?
「一周忌は弟がやってくれた。
命日だからって俺が行く必要あんの?」
ヨコの言葉に我に返る。
あかん、俺何考えてた?
頭を振り、話に俺は集中した。
今日は平日。
ヨコ弟が命日になる前の休日に一周忌は済ませてくれていた事を昨日、酒を飲みながら聞いてた。
けど、それでも俺は行くべきやと思ってる。
「ありますよ」
言い切る地味子にヨコは俯いていた顔を上げ、地味子の言葉を待ってた。
その表情は、不安で複雑でまるで迷子の子供みたいやったんや。
「だって、横山さんはまだお母様に会いに行っていないでしょ?」
「・・会えへんやん」
「実際はそうです。
でも、会いに行って手を合わせて、言いたい事を話すべきです」
「・・返事返ってこん」
「返っては来ません。
でも伝わりますよ、きっと」
「・・・お前には俺の気持ちわからへん」
「わかりません。
誰1人わかりません。
ですが、わかろうと努力しています」
「・・行きとーない」
「私はその気持ちもわかりません。
なので、行くべきだと新幹線を手配しました」
「・・わかろうとする努力はどこいったんや」
「ちゃんとあります。
だから、帰ってくるのをここでお待ちしています」
えっ?
ここでって・・ここ?!
せっかくの休みは俺たちだけじゃなく、地味子もなのに!?
「待ってます。
ちゃんと会ってお話しして来て下さい」
「・・・わかった。
でも、ここいたら変に思われるからどっか店で待っててや」
おいおい!
そこは普通待たなくていいって言う所じゃねぇの?!
そこまで心細いんかよ・・
おそらく、俺らが行かなきゃ絶対ヨコは行こうとはしなかったのかもしれねぇな。