第9章 SIX
ー渋谷sideー
来たで!来たで!来たで!!
タクシーから降りるヨコと地味子。
ちゃんとヨコを連れて来た地味子は、流石や!
昨夜の様子じゃ、無理かと思ってたんやけどな。
「なぁ、何で隠れてん?」
柱の影から2人を盗み見るメンバー。
1番後ろの大倉が最もな意見を言った。
「しぶやんがカメラ回そうって!
メンバーのオフショット」
そう言って小型ビデオカメラを見せるマル。
朝、山田に事務所から持って来させた。
急に思いついたんや。
「ヨコの許可次第でDVDの特典か何かにしよーかと思ってる」
「マジ?俺、髪セットしてへん」
「信ちゃんはそのままで大丈夫だよ」
嬉しそうに喜ぶヒナは、わかってない。
ヤスの言葉の裏にある意味。
まぁ、たまに出るヒナの天然やんなー。
「っうか、横ちょ『行きとーない』って言い過ぎ」
「あいつ、地味子に甘えてるで」
「駄々捏ねヨコも久しぶりに見るなー」
何か言い争いをしながらも大人しく地味子に付いて行くヨコ。
俺らはバレないようにその後を追った。
「あっ、あかん!」
「何?すばやん何?ヨコ逃げた?!」
ヤスからは見えないために俺の裾を引っ張り、頻りに尋ねてくる。
「地味子にバレた」
「「えっ?」」
明らかに視線が合ってる。
まぁ、警戒心が強い地味子にはバレるとは思ってたけどこんな早くにバレるとは思わんかったな。
『行きとーない』
『帰りたいー』
そればかり連発するヨコには、バレてへんみたいや。
「どーする?
あずみちゃん、あっち側だから近付いても大丈夫だと思うけど」
俺らに背を向けてるヨコ。
俺らの存在に気付いても地味子は、素知らぬ顔をしてくれていた。
「うーん、マル声拾えてる?」
「微妙・・」
「じゃ、近付く」
表情も撮りたいからな。
そう言って俺たちは恐る恐る、ヨコ達に近付いた。