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俺らのマネは地味子さん。

第9章 SIX





何でここにおるんやろー。
いつの間にか、白元さんと一緒にタクシーに乗り込み。
いつの間にか、もう駅に着いていた。

「行きとーない」

「行くって約束しましたよ。
さ、降りて下さい」

隣に立つ白元さんは、相変わらずいつもの白元さん。
髪を1つにまとめ、紺のパンツスーツ。
黒縁眼鏡姿。
色気なんて、微塵も無い。


「ホームで待ち合わせです。
入場券買って来ますのでここで待ってて下さい」

そう言って、俺の鞄を持ったままそばを離れる白元さん。
逃げなくするために鞄を持たせてくれない。

鞄は勿論、携帯や財布も白元さんが握ってた。

ここまででいいって言っても信用されていないのか、疑いの眼差しを向けて来る。
問答無用で、ホームまで来るつもりや。


そんな白元さんの後ろ姿を見つめながら、さっき家で見た光景は夢じゃないかと疑ってしまう。

だってな、ほんま同一人物には見えへんねん。

震えてたんや。
あの、白元さんが震えてた。

動揺もせず、怖気付いてないと思ってたのに、腕を退けようとするその身体は震えてた。

女だと気付いた。
そりゃ、女だからキスもしたし抱こうともした。

けど、俺は何処かで白元さんをあいつらと同等に扱ってたんや。

でも、違った。
細い腕、華奢な身体。
守らなきゃいけない女だって気付いたんや。

普段そんな雰囲気を匂わせないからな・・


結局、顔は見てない。

思わず抱きしめて、謝った。
それから半泣き声にめっちゃ動揺して言われるがまま動いてた。
シャワーを浴びて準備した。

ほんま、泣かせるつもりはなかったんや・・


「さぁ、行きますよ」

「・・・行きとーない」

何度目かわからない言葉を投げ掛けるが、聞いてくれへん。

「約束しました」

「・・卑怯者」

「褒め言葉として受け取っておきます」

ズルいわ。
ベッドの上でのあの姿・・
全く別人やん。

「みんなに言うで」

「どうぞ、構いません」

ほら、動揺のカケラも無い。
くそーっ!ほんま、可愛くない!!

俺が泣かせたって言えへんのわかってんねん、こいつは!!




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