第8章 FIVE
ー横山sideー
「裕ちんがピンポンして」
泣きそうな顔のマル。
仕事終わりに鬼電してきたマルに押し切られ、すばるの自宅まで来た。
半泣き状態のマル。
気持ち悪いねん。
「白元さん来てるんやろー
任せとけばええねん」
「そうだけど!そうだけど、もし、もしだよ!
暴走したしぶやんに襲われてたらどないするん?!」
「・・・アホか」
俺はすばるの部屋のボタンを押し、応答を待った。
【何しに来たん】
「しぶやん!生きてるかっ!!
あずみさーん、無事かーっ!!」
カメラに顔面を押し付けるマル。
押し退けられてた俺は、もう帰りたくなっていた。
【ドアホっ!!】
ガチャ!!!と勢い良く切られた。
だが、同時にオートロックの扉が開く。
「元気そうやで」
「あずみさん、今すぐ行くでっ!!」
マル・・
ここに来た根本の理由が変わってるで・・
玄関の鍵は開いていて、見覚えがある靴が無造作に脱ぎ捨てられていた。
「ええ匂い!!」
「大倉来るぽいな」
「えっ?ほんま?!」
あの靴は確か大倉が履いてた靴。
予想通りにリビングには大倉がいた。
「お疲れ〜っ!!」
「お前も来てたんか?
・・・すばる、お前っ・・」
キッチンから出て来たすばるの姿を見て愕然とした。
何やそれ!あかん!
「ぶっ!!」
我慢出来ず、吹き出したマル。
そのまま膝から崩れ蹲ってしまった。
起きろ、マル!
これを相手にするのは酷や!
俺には無理や!!
「ウケるやろ!
すばるくんピンクのエプロン着けて出迎えてくれたんやで!!」
大笑いし過ぎだ、涙目だぞ。
大倉を横目で見ながら俺は静かにすばるに近付いた。
「すばる、頭打ったか?」
「・・アホかっ!!」
「白元さんが着せたらしいでっ。
で、飯2人で作ったんやて」
笑いながら教えてくれた大倉。
今、何てゆーた?
すばるが飯?
手作り?
ヤバい。
これは、ヤバい。
いくら2人で作ったとしても出来は期待できない。