第8章 FIVE
ー渋谷sideー
あかん。
マジで、あかん。
こんなやる気が出ないのは久しぶりや。
散らかった部屋。
普段からそんな綺麗な方やないけど、心の状態を表してるのかめっちゃ汚い。
片付ける気も起きず、俺はソファーに寝転んだ。
ーピーンポーンー
誰や?
いつの間にかウトウトしてた。
微睡みの中、出るのも面倒で放置する。
どうせセールスか何かやろーうな。
再び、俺は目を閉じた。
頭に浮かぶのは地味子の事。
守ってもらうつもりなんて毛頭無かった。
けどな、事務所に所属してると特にジャニーズはかなりの確率でスキャンダルを防いでくれてるっては気付いてた。
特に俺のは、知らせんままが多いってのも気付いてた。
だけどその分、マネジャーに皺寄せがきてる事気付こうとはしなかったんや。
今までどれだけ、山田や小嶋に迷惑かけたか・・
それを気付かせてくれたのが、地味子・・
呆れられたやろーな・・・
「渋谷さん?起きてますか?」
えっ?地味子?!
パッと目を開ける。
玄関から地味子の声が聞こえて来た。
「渋谷さん、チェーン外して下さい」
慌てて玄関に行くと合鍵で開けたのか鍵は外れているものの、チェーンを嵌めてたために中に入れん状態の地味子。
「インターホン鳴らしても応答が無かったので合鍵を使いました」
すみません と、頭を下げる地味子。
レッスンをサボったのが地味子の耳にでも入ったんか・・
「・・サボったんは悪かった。
俺は平気や帰ってやー」
「・・チェーン外して下さい」
「大丈夫やて、ゆーてるやろ?」
あかん。
地味子は悪うない・・
やのに、このままじゃ確実に当たってまう。
「このチェーン、切られたくないなら外して下さい」
どうやって切るつもりかは知らんけど、地味子を家に上がるわけにはいかない。
「ええから、ほっとけや!」
「・・ご迷惑ですか?」
「ーーっっ!!」
あかん、あかんねん。
これ以上、地味子に甘えられん。
わかってや・・
無理矢理ドアを閉めようとして、ドアノブを掴んだ瞬間隙間から地味子の手が伸びて来た。
そっと俺の手に重なる地味子の手。
今まで1度も触れて来なかった地味子が触って来た。