第8章 FIVE
「泣きました」
「えっ?」
「涙が溢れて止まりませんでした」
泣くって・・
演技が怖くてか?
それともラストシーンで感動して?
「じゃ、亮と初めて会う時その印象が強かった?」
「・・確かに錦戸さんのドラマはあれしか見ていないのでその印象は強かったですね」
えっ・・
「俺・・あんなヤツちゃうぞ」
「もう、ちゃんと知ってますよ。
ただ・・好きな女優さんが出ていたので見ていて・・・
いつの間にか錦戸さんの演技に引き込まれました。
・・言葉も行動も感情も全てリアルでした」
何だろ・・
めっちゃ照れくさい。
あかん、恥ずかしくなってきたわ!
村上くんから飲み会で聞いていた。
立ち聞きで聞いてしまったこいつの考え。
こいつはそれを知らない。
俺たちメンバー全員、知ってるって。
村上くんは言ったんや。
『嫌う前に相手を知れ、聞いて考えて、それでも嫌いならしゃーない』って。
だから、知ろうと思った。
直接こいつの言葉で聞こうと思ったんや。
一緒だったんだ。
こいつも、俺の事知ろうとして努力してたんやな。
「・・白元ちゃんにとって身近な話しだったりする?」
ヤスが投げ掛けた言葉。
急に何の話しだ?
考え込んでるうちに聞き漏らしたのか?
「・・安田さんは鋭いですね」
「・・・何の話?」
「あっ、いや、亮は気にしなくてええよ」
「・・大丈夫です、昔の話しですから」
ほんま、何の話?
俺だけついていけん。
仲間外れされた感じで、めっちゃ嫌やわーっ!!