第8章 FIVE
「村上さんからお聞きしました」
不貞腐れて外方を向いていた錦戸さん。
だが、村上さんの名前を出した途端怯えるように視線が彷徨う。
「錦戸さんはどんなお仕事も引き受けると言っていたと」
「いや、それはな・・
時と場合ちゅうか・・・」
「何より村上さんは自慢していましたよ。
錦戸さんのリアクションは凄いと」
「えっ?ほんま?!」
嬉しそうに瞳を輝かせる錦戸さんに私は頷いた。
嘘は言っていない。
要は、捉え方次第だ。
「さぁ、メイクと衣装替えお願いいたします。
撮影の時間が迫っています」
「・・なぁ、あんたお化け信じる?」
怯えた様に見上げてくる錦戸さん。
「信じません」
私は、ハッキリそう口にした。
「そっか〜」
何の根拠も無い言葉なのに信じ切った錦戸さんは、さっきと打って変わってニコニコしながらバスを降りて行く。
「亮ちゃん・・
俺も同じ事ゆーたのに何で白元ちゃんの言葉を信じるねん・・」
「だって、章ちゃんより説得力あるもん」
どうにか納得してバスを降りてくれた錦戸さん。
無事撮影も始まり、順調に進んで行った。
可愛い笑顔で男らしくお化け屋敷に挑む安田さんとイケメンな顔立ちで怯え怖がる錦戸さん。
対称的な2人にプロデューサーは、大変気に入ってくれた。