第5章 TWO
コンサートホールから離れた中規模の神社にやっと着いた。
無意識に吐息が漏れた。
思ったより緊張してたんやろうな。
俺たちを降ろした山田は車を停めに駐車場へ向かう。
降りたのはメンバーみんなと白元さんだけ。
山田を待つ事なく、みんな境内へと歩き始めた。
「出店や!」
お祭り好きな俺らは、参拝より先に目移りしてしまう。
普段、それを留める役割のヒナですら目を輝かせていた。
「参拝が先です」
落ち着いた静かな声にメンバーは返事をしながら境内を進む。
手を清め、並んで参拝した。
いつも騒がしい俺たちやけど、この時は厳粛な雰囲気に圧倒され口数が減る。
綺麗な一礼やった。
ピシッと伸びた背筋、頭の下がる角度。
どっかの旅館の仲居さんかキャビンアテンダントみたいや。
「何見てるん?ヨコ〜」
ガシッと肩に重さが加わる。
ヒナが寄りかかってきたんや。
「別に」
「ふーん、白元さんの礼はいつ見ても綺麗やな」
カーッと顔が赤くなる。
見てた癖にこの言い方、ヒナもタチが悪い。
「何が言いたいねん」
「くくくっ、顔赤いで」
俺たちを尻目に白元さんは、参拝の仕方や本当は願い事を言うのではないなどマルとヤスと会話に花を咲かせてた。
マルとヤスは、白元さんと仲良く喋ってるけど奥底まで突っ込んでへんみたいや。
まだ、若干距離感が見える。
相手が女なら気使うしな。
まぁ、俺には人の事が言えんけどな・・・
「何食べるん?」
「たこ焼きやろ、お好み焼きやろ。
あっ!亮ちゃん焼きそばあるでッ!!」
一応これでも芸能人。
変装はしているが、馬鹿でかい声に白元さんはビクビクと周りを見渡していた。
「くくくっ」
いつも完璧な白元さんとは違う表情。
見ていて飽きん。
流石の虚りぷりにヒナが話しかけてるが一向に治らない。
いつもとは違う姿に俺は、親近感が湧いた。
いくら真面目で堅物でも人間なんやなって。