第16章 THIRTEEN
ー安田sideー
「え・・俺?!俺が連絡取ってたんは正月休みの間や、それ以降は何の連絡も取れへん。
今どこで何してるかさえわからへんねん」
「うん、それぐらいに俺んちから消えたで」
覚えてる。
頻繁に鳴るスマホ。
楽しげだけどどこか、寂しさが残る笑顔。
あの時にはもう決めてたんや。
俺が気付いてさえいれば・・・
「じゃ、何で今日御堂筋にいてるって知ってたん?」
俺は、ポケットの中から1枚の紙を取り出しみんなに見せた。
ボールペンで書かれた短いメッセージ。
お世話になりました。
白元
「これって・・」
「白元ちゃんが俺んちに残していった書き置き」
そして、もう1枚紙切れを出した。
鉛筆で擦った黒く浮き出た字、それは今日の日付と御堂筋と書かれていた。
「そのメモに筆圧が残ってた。
試しに擦ったら出てきたんや」
「ヤス、探偵みたいやな」
「何の運命か同じ日に大阪の収録が入ってた。
賭けやったんやで、ほんまに白元ちゃんが現れる保証は無かったんやからな・・」
だからわざわざ、山田に頼んだんや。
でも、まさかほんまに会えるとは思ってなかったわ。
「それ以外もう手掛かりは無いのか?」
俺は首を縦に振った。
何のためにいたかさえわかってへん。
店の名前や何か他にあったら、次へと繋がるがそれも無い。
それを聞いて、ブツブツと考え込んだ信ちゃん。
「御堂筋・・あそこに何がある?」
「ビル?」
「支庁?」
「わからへん、あの辺何もないやん」
確かに、あの辺は企業ビルばかりや。
そんな所に白元ちゃんが用事?
「あ」
突然、声を上げたヨコちょ。
みんなの視線が集まった。
「白元の前の会社は?どっか勤めてたやん」
なるほど!ありえるで!!
「銀行?」
「保険会社!」
「わからへん!!」
1番に投げ出したんは、しぶやん。
確かに、憶測だけで判断するには無理があった。