第13章 TEN
ー錦戸sideー
泣くつもりはなかった。
けどな、感極まった。
原因が俺にあるのは確かで。
俺がキレへんかったら信ちゃんも我慢してたはずや。
なにより、俺はエイターやなくてあいつに伝えたかった。
存在を隠せば隠す程、俺達は頼りないんか?って詰め寄りたくなるねん。
「モニターオン!」
すばるくんの合図で他のメンバーはアリーナを見渡していた。
それは、勿論白元を見つけるため。
まぁ、見つからんで横山くんの動画が流れても俺は痛くも痒くも無い。
けど、見つける。
見つけて直接ゆーねん。
俺達を信じろ、頼れって・・
不審なヤツはいないかとアリーナを見渡す。
ふと、目に付いた女。
あの子・・
さっきも見かけた女や。
明らかに様子が変。
かなり狼狽しとるで、まるで・・・
えっ?
へぇ?
はぁ?
あかん、コンサート疲れや。
目薬が必要や。
「章、ちゃん・・」
俺は隣にいた章ちゃんを近くに呼んだ。
「何?いた?」
「いや、あのさ俺の目大丈夫?」
「・・・亮、頭大丈夫?」
だよね・・
俺、頭可笑しくなったんやろーな。
絶対に違うと思う。
思うんやけど、目が離せん。
何やろー
雰囲気?
背?
髪の長さ?
あかん、俺のデーターはそれだけや。
「あっ、あの子しぶやんの熱の子や」
「えっ?熱って」
「ほら、24時間テレビん時の子。
覚えてへん?」
あー、何となく頭の隅に・・
だからか!だから、見た事あったんや。
「あの子の事しぶやんのやけに気にしてさー
めっちゃ優しかったんやで、こーやって熱測ったりして」
そう言って俺の額に触れる章ちゃん。
「えっ?ほんま?」
「ほんま・・うん、あの子には優しかったんや・・・」
頷く章ちゃんには、悪いが信じられへん。
あのすばるくんが優しいなんて・・
あっ、でも、好きな子にはすばるくんも優しいしな・・
ジェントルマンだし・・
えっ?好きな子?
えっ?えっ?えっ?えっ?!!!
俺は再び、女に視線を向ける。
すると、パチっと目が合った。
さっきも合ったな、確か・・
あの時はモニターを見ろって指差されて・・・
えっ?
マジ?
もしかして、もしかしてなん?!