第9章 リクエスト作品 オレがオレであるために〜カラ松〜
書店員が待つレジへ足を向ける、オレ。
手にはエロ本と崎尾豊のコード譜。
カモフラージュもバッチリだ。
レジを並ぶ間少しソワソワする、オレ。
こういうのはサッと買ってパッと帰りたいものだが…。
前のガイズ、一気読みでもする気か?一体何冊まとめて買ってるんだ?なんでオレはよりにもよってエロ本を持ったまま5分もストップザカラ松をしなければならないんだ。
フッ、まぁ焦っても仕方ない。人生前に進むだけではなく立ち止まることも必よ……んんー?やっといなくなったか。
クールな足取りでレジへと進み、2冊重ねて置く、オレ。もちろんR18の方が下だ。
「お待たせ致しました」
「っ!?」
書店員のキュートなボイスに顔を上げ、すかさず本をレジから取った。
「…お客様?」
(なぜ気づかなかったカラまぁぁぁあつ!!)
不覚だぜ!恋のレッスンABCを妄想していてキュートなガールの存在が目に入っていなかった。
いつもこの時間帯はやる気のないおっさんだったからつい安心しきっていたんだ。
ビークールカラ松。
ひとまずエロ本を戻さなければ。
「す、すいません、間違えたんで変えてきます」
「ではこちらで預かります」
「えぇっ!?いや、大丈夫です」
「え?」
「も、もう少し、店内を見たくなったんで」
「分かりました。ごゆっくりどうぞ」
不意打ちのサンシャインスマイルがオレに降り注ぐ。
(クッ、なんて可愛いんだ…!)
危なかった。グラサンをかけていなければ確実に目をやられていた。
とりあえず、さっさとエロ本を戻して仕切り直しだ。