第28章 沖縄旅行は海の香り
パン、と聞こえた気がした。
2人の撃った銃弾は、私には見えないほど速く飛んでいき……
殺せんせーの顔へとぶつかった。
そして次の瞬間。
波から光とともにドッと音が溢れ出し、爆発音が盛大に鳴り響く。
一瞬だったかもしれないし、数秒続いたかもしれない。でも気づいた時には、目の前に何もなくなっていた。ただゆったりと流れる海と、満天の星空が私たちの目に飛び込んできた。
「や……殺ったのか!?」
誰かが言った言葉に、皆が目を見開く。
確かに殺った感覚…はあった気がする。でも……
「油断するな!! 奴には再生能力もある、片岡さんが中心になって水面を見張れ!!」
「はい!!」
水泳が得意なイケメグが、ゴーグルを素早くつけ泳ぎ出す。
数十秒後。
「あっ」
と倉橋さんが声を上げた。
そこからはブクブクと泡が飛び出している。
「…おい」
杉野くんの声にこくんと頷いた菅谷くんは銃を構え、真似するようにみんなも銃を向ける。
泡が少しずつ大きくなってゆき、水がこんもりと浮かび上がる。
そしてぷかり、と何かが浮かんだ。
その正体は……
殺せんせーの顔(何故かオレンジ)が入った透明な球体。いつもの殺せんせーのサイズからするとかなり小さい。ってか顔しかないし。
……みんなの心の声が聞こえる。
ズバリ『何アレ?』だ。
そんな皆の心を読んだように、オレンジ殺せんせーは話し出した。
「これぞ先生の奥の手中の奥の手。完全防御形態!!」
……さらに『はあ?』という顔をする皆。
「外側の透明な部分は…高密度に凝縮されたエネルギーの結晶体です。肉体を思い切り小さく縮め、その分余分になったエネルギーで…肉体の周囲をガッチリ固める」
…マンガの時も思ったけど顔だけ限定で残るってすごいよね。
「この形態になった先生はまさに無敵!! 水も、対先生物質も、あらゆる攻撃を結晶の壁がはね返します」
攻撃が一切効かない、と言いきった殺せんせーに矢田さんが困り顔で
「…そんな、じゃ、ずっとその形態でいたら殺せないじゃん」
と呟いた。しかし、
「ところがそう上手くはいきません」
とプカプカ浮かんだ殺せんせーは言った。
「このエネルギー結晶は…24時間ほどで自然崩壊します。その瞬間に先生は肉体をふくらませ、エネルギーを吸収して元の体に戻るわけです」