第28章 沖縄旅行は海の香り
船が水を切る音が耳に届く。
椚ヶ丘から約6時間。周りは海だけだったが、私たちの目的地が少しずつ姿を見せてきていた。
「にゅやァ…船はヤバい…船はマジでヤバい、先生頭の中身が全部まとめて飛び出そうです」
殺せんせーの弱点⑧、乗り物で酔う。確か修学旅行の時も酔ったんじゃなかったっけ? ……一方私は昨日のお酒がだいぶ頭に響いている。確かにこれも酔っているといえるかな。
「イリーナ先生…どんな強いお酒烏間先生に飲ませたの」
「あら京香。まだ頭痛いの? フフフ、子どもには内緒よ…かなり強い事は教えといてあ、げ、る」
アルコール度数どれ位なんだろうな…1口飲んで潰れた位なんだからかなり強いんだろう。ここまで来ると知りたくない気もする。
「! 起きて起きて殺せんせー!! 見えてきたよ!!」
倉橋さんがすかさず殺せんせーにナイフを突きつけるが、殺せんせーは酔いながらも華麗に避けた。
「東京から6時間!!」
「殺せんせーを殺す場所だぜ!!」
雲の中から静かに顔を出したのは……
「島だーっ!!」
既に旅行ムード満載の殺せんせーはハート型のサングラスをつけ、トロピカルジュースを飲みながら笑った。
「荷物はこちらでーす」
船の人が優しそうに荷物を渡してくれる。
「あれ? 東尾さん、何その小さなポーチ。でかいバッグに入れなかったの?」
目ざとく私のポーチを見たのはカルマ君だ。
「あー…と。デカイバッグ入らなくて…」
「明らかに隙間あるでしょ、それ」
確かに上の方はスカスカだ。
「……入れんのめんどくて」
とりあえずひねり出した答えに、カルマ君は「ふぅん?」と言いながら一応納得してくれた。
……この中には、出かける間際に入れるかどうか迷って入れたものが入っている。多分…使うことになると思うんだけど。どうだろう……。
ホテルに荷物を置き、必要なものだけを持ち出してビーチに出る。海の家…みたいなウッド調の建物に入り、椅子に座る。
「はあ〜…疲れた…」
「あはは、それは分かるけど…これから3日間もここにいれるなんて天国だよ〜!」
茅野ちゃんはうーん、と手を伸ばして思い切り空気を吸い込んだ。
「ようこそ普久間島リゾートホテルへ。サービスのトロピカルジュースでございます」
……!!
私は目の前でにこやかに笑う男性を見つめた。