第27章 夏の一時
夏は暑い。
私は今が仕事盛りだ! と言わんばかりに燦々と輝く太陽を睨んだ。
夏でも訓練は終わらない。旧校舎のすぐ傍にある暗殺訓練用アスレチックで個人訓練をしようと私は校舎にやってきた。
「……誰もいないな」
流石に暑すぎて皆来なかったみたい。私はうんていに手をかけた。
「んっしょ……」
一人の時間は別に嫌いじゃない。
でもいつもうるさいこの校舎が、夏休みになった瞬間静かになる、というのが少し妙な空気を放っている…気がする。
「あれー、東尾さんも来てたのー?」
うんていを終え一息ついていると、後ろから倉橋さんが声をかけてきた。
「倉橋さん。どうしてここに?」
「実はね、さっきまで虫とりしてたんだー! 途中で前原くんと渚君と杉野くんに会ってさ。私が仕掛けたトラップを調べてとってたんだけど……岡島くんが殺せんせーを殺そうとしててね、それの手伝いをしてたの」
……!
倉橋さん大活躍の回だ! そうか、今日はこの回の日だったんだ。
「殺そうとしたらさー、殺せんせーが私が見たかったミヤマクワガタのアルビノ見つけてさ! すっごかったよー!」
「すごいね、倉橋さんは生き物大好きだもんね」
「うん! 虫から哺乳類までなんでも大好き!」
倉橋さんは可愛い笑顔で笑った。
眩しい……私は無意識に目を細めた。
「……ってそういえば倉橋さん、そのアルビノのミヤマクワガタはどうしたの? アルビノってすごく高いでしょ?」
「あはは、数十万もするよ、ミヤマは! 男子たちは欲しがったんだけどー、多分博物館寄贈か、殺せんせーが山に返すと思う」
「えー勿体無い……まあちょっと高すぎるしね」
「うん、どっか研究所とかに売られちゃったら可哀想でしょ? 解剖とかされちゃったりさー」
倉橋さんは生き物大好きだけど、生き物のことを考える動物愛護者らしい。
……やっぱ、E組って根っからのワルいないよな。頭も回るし。
「じゃ、私訓練に戻るね」
「あ、オッケ〜、頑張って!」
倉橋さんは虫とりした後っていう位だから疲れてるだろう。私は1人で訓練に戻った。
次は対人訓練しよっかな。