第3章 第1話は諦めと共に。
「遅刻無し……と。素晴らしい! 先生とても嬉しいです」
殺せんせーは顔に丸のマークを浮かばせて言った。
「残念ですねえ。今日も命中弾ゼロです。
数に頼る戦術は個々の思考をおろそかにする。目線、銃口の向き、指の動き。1人1人が単純すぎます」
……ん? このセリフ、どこかで聞いたことが…というか見たことが、ある?
「もっと工夫しましょう。でないと…最高時速マッハ20の先生は殺せませんよ」
表情を変えずに言う先生に、前原くんがつっかかった。
「本当に全部よけてんのかよ先生! どう見てもこれただのBB弾だろ? 当たってんのにガマンしてるだけじゃねーの?」
「そうだそうだ!!」
……あ! 思い出した、この光景…!
「……では弾をこめて渡しなさい」
岡野さんから渡された銃を構え、先生は言った。
「言ったでしょう。この弾は君達にとっては無害ですが……」
銃の軽い音とほぼ同時に触手の切れる生々しい音が聞こえる。
私の目が捉えたのは落ちる触手。
「国が開発した対先生特殊弾です」
周りのみんなは驚きの目で先生を見つめた。
「先生の細胞を豆腐のように破壊できる。ああ、もちろん数秒あれば再生しますが」
先生は触手を再生して、みんなを見つめ返した。
「だが君達も目に入ると危ない。先生を殺す以外の目的で室内の発砲はしないように」
それに続けて、言った言葉。
「殺せるといいですねぇ。卒業までに」
殺せんせーに横縞の模様が浮かぶ。
「銃と弾を片付けましょう。授業を始めます」
先生が言ったと同時に鐘が鳴った。
この一連の流れに、私はすぐに反応する事が出来なかった。
「……東尾さん、岡島が銃回収してるよ? これ、ほうき」
杉野くんが差し出したほうきを、すぐに受けとる事が出来なかった。
「……東尾さん!」
「!!! ……あ、ありがとう杉野くん。」
ほかの人にほうきを配り出した杉野くん。
私はまだその場に立っていた。