第25章 期末テストは個人戦!?
『浅野学秀、人望厚く成績はトップ。プライドの高いA組の猛者を纏め上げるカリスマ性。彼自身の指導力に加えて…』
そこで言葉が途切れた。
どうやら会議室の中を伺っているらしい。少しだけあちらの声が聞こえる……耳をすませた。
『1日に千里の道を行くよりも君と一里をいくが楽しき、さぁ学ぼう。美しい言葉が君の動脈を満たすまで』
……寒いセリフだな……これは3位の榊原蓮。かなりの女たらしだっけか。
『フン、俺が住んでたLAでそんな文法じゃ笑い者だぜ』
これは6位の瀬尾智也。……あれ? この人って確か前原くんと前付き合ってた人の二股相手じゃなかったっけ? ま、いっか。
『大事なのはその出来事がもたらした変化の大きさ。これ見えないと君社会から置いてかれるよ?』
えーと、2位の荒木鉄平。丸メガネの人。
『死ぬ気で詰めこめ!! 中高の理科は暗記だけで充分だ!!』
4位のカルマ君を恨んでる5位の小山夏彦。髪がワカメみたいで黒縁メガネで…私が見た瞬間「うわ」って言った人。
微かにしか聞こえないけど、杉野くんのスピーカーモードで何とか聞き取れる。
『全教科パーフェクトな浅野と、各教科のスペシャリスト達。5人合わせて「五英傑」。
5人合わせりゃへたな教師より腕は上だ。ただでさえ優秀なA組の成績がさらに伸びる』
……って事は浅野学秀は数学って事?
それじゃカルマ君のライバルな訳だ。
『このままだとトップ50はほぼA組で独占だ。杉野、奴等はおまえらE組を本校舎に復帰させないつもりだ』
その言葉を聞いた杉野くんはなにかに気がついたのか、ふ、と笑った。
「ありがとな進藤、口は悪いが心配してくれてんだろ。でも大丈夫。今の俺等は…E組をでる事が目標じゃないんだ。
けど、目標のためにはA組に負けないくらいの点数を取らなきゃなんない。見ててくれ、頑張るから」
電話越しの進藤君はしばらく口を開かなかったが、その後嬉しそうに
『勝手にしろ、E組の頑張りなんて知った事か』
と杉野くんに言った。
……この2人の確執は完璧に無くなったみたい。
私達クラスメイトは嬉しくなって杉野くんを見た。