第25章 期末テストは個人戦!?
教室へ行くとみんな既に勉強をしている。
私は受験生の間そんなに真面目に勉強をしなかった。ただひたすらに時間が流れて、とりあえず高校は偏差値余裕な所を選んで……
……でも、今私はここにいる。
「あれ、杉野もう来てたんだ」
「おう、ちょっと参考書探しでな」
たわいない会話も全部現実で、いままで見えなかった事が見えてくるようになる。
「京香さん、座りましょう」
「……うん、そうだね」
…忘れないよ、きっと。皆の輪から私が消えても。
11月の、Xデーになっても、絶対……。
なんて少し感傷的になっている私の耳にブブブ、とバイブの音が聞こえた。
近くにいた杉野くんの電話だ。
「おう、進藤か」
『ああ、球技大会では世話になったな。高校で借りを返すとおまえに言ったが、俺と違っておまえはまともに進学できるのか心配になってな』
「はは…相変わらずの上から目線で」
ピキ、とこめかみに筋が入る杉野くん。
……進藤君の声は大きく、結構聞こえるぞ……。
しかしそんな大きかった進藤君の声が急に険しくなった。
『…というのもな。少なくともE組脱出は不可能になりつつあるぞ。
今会議室に…A組が集まってる』
電話越しにも緊張感が漂う様だ。
杉野くんは静かに電話をスピーカーモードに切り替えた。
『俺達三年のクラスの序列は、最下層におまえらE組、横並びなB・C・D組。そして頂点は、成績優秀者を選りすぐった特進クラスのA組がある』
最下層ってさらっと言うのが恐ろしい…っていうかB.C.Dって横並びなんだっけ、忘れてた。
『そのA組が全員集結して自主勉強会を開いてるんだ。こんなの初めて見る』
渚君も杉野くんのスマホを覗き込み、こちらに視線を送る。私は茅野ちゃんと一緒に頷いて視線をそちらに向けた。
『音頭を取る中心メンバーは、”五英傑”と言われる、うちが誇る天才達だ』
ゴクリ、と生唾を飲むと、そこからいきなり声のトーンが急転した。
『中間テスト総合2位!! 他を圧倒するマスコミ志望の社会知識!! 放送部部長、荒木鉄平!!
中間テスト総合3位!! 人文系コンクールを総ナメにした鋭利な詩人!! 生徒会書記、榊原蓮!!
中間テスト総合5位!! 4位を奪った赤羽への雪辱に燃える暗記の鬼、生物部部長小山夏彦!!』
……なんでこんな盛り上がってるんだ……すげぇ。
杉野くんもポカン。