第19章 球技大会は女のバトル。
私は球技大会が終わった後、そのままの足でE組へ向かった。
「で? どうしたんですか東尾さん」
殺せんせーはまあ…マッハだから当たり前なんだけど、普通に教員室にいた。
「……殺せんせー、私…皆の、未来を変えちゃったよ」
そう、それは、私がここにいる上での絶対タブー。
「本当は、今日の試合、女子は接戦で……負ける、はずだったの。でも、私頑張っちゃったよ、勝っちゃったよ……」
みんなに、訪れるはずだったものを、私は変えてしまった。
殺せんせーはそんな私を見て言った。
「どんな動機であれ、君が頑張った事を私は否定しません。反則も、相手に対する公平も守った上でその結果なら、君が頑張った証でしょう」
……そう、かもしれないけど。
「……ごめんなさい、先生。自分の家にも帰れないし、ここにいても未来を変えちゃうなんて……」
「東尾さん、君は気にしすぎです。
私達は勝って嬉しい、次も頑張ろう……それでいいじゃないですか」
殺せんせー……。
「それとも君は、勝って嬉しくなかったんですか?」
「そんな訳ない!! 皆で練習も頑張って、結果出せて……すごく嬉しいよ!!」
私の言葉を聞いて、殺せんせーはうんうんと頷いた。
「それを糧に、次も頑張りましょう」
糧にする。
「はい、頑張ります」
すぐ悩んで落ち込む時も、先生達は私を支えてくれた。
今日みたいに、前みたいに。
……もう、悩んでいる暇はないのかもしれない。
だから、この一瞬を無駄にしないで、勉強も暗殺も、頑張らないと。
「先生、ありがとうございます」
「いえいえ。君はよく悩みますからねえ。そんな生徒のケアも先生の役目ですから」
丸い目を細めて殺せんせーは言った。
「やっぱり私よく悩む方なんですね」
「それはもう。でも、少しずつ悩むのも大事だと思いますよ。それだけ考えているという事ですから。溜め込みすぎるのもいけませんしね」
それでも、殺せんせーはなんでも知ってる訳ではない。
だから、これからも守るよ。
あの日に交わした約束を。