第19章 球技大会は女のバトル。
少しの作戦会議後。
「野球となりゃ頼れんのは杉野だけど、なんか勝つ秘策ねーの?」
皆が席についてから、前原くんは切り出した。
気付いたら寺坂グループいなくなってるし……。
「…無理だよ。最低でも3年間野球してきたあいつらと…ほとんどが野球未経験のおれら。勝つどころか勝負にならねー」
……ま、そうだろうな。
E組では部活も禁止されている。
私なんて実質九ヶ月位は部活をしていない。
「それにさ、かなり強ぇーんだ。うちの野球部。
とくに今の主将進藤。豪速球で高校からも注目されてる。
…俺からエースの座を奪った奴なんだけどさ」
杉野くんの一言に、皆が息を呑む。
……皆、杉野くんが野球を好きなことを知ってる。
ひたむきに努力していることも。
そんな杉野くんから、エースを……。
「勉強もスポーツも一流とか、不公平だよな人間って」
押し黙る教室に、杉野くんの強い意志の言葉が通った。
「だけどか…殺せんせー。『だけど』勝ちたいんだ殺せんせー。善戦じゃなくて勝ちたい。
好きな野球で負けたくない。野球部追い出されてE組に来て…むしろその思いが強くなった。
…こいつらとチーム組んで勝ちたい!!」
……渚君が蛇なら、杉野くんはまるで虎みたいだ。
正面切って追いかける。
「…まぁでも、やっぱ無理かな殺せんせー」
そういった杉野くんが視線をあげると、明らかにわくわくした様子の殺せんせー。
触手という触手に野球道具やら野球関連やらのものを持ち、帽子をかぶってユニホームを着て……って言うのも面倒になるくらい。
「おっ………………おう。殺せんせーも野球したいのはよく伝わった」
「…ヌルフフフ、先生一度スポ根モノの熱血コーチをやりたかったんです。殴ったりはできないのでちゃぶ台返しで代用します」
「用意良すぎだろ!!」
巨人の星かそうか……。
「最近の君達は目的意識をはっきりと口にするようになりました。
殺りたい、勝ちたい。
どんな困難な目標に対しても揺るがずに。
その心意気に応えて、殺監督が勝てる作戦とトレーニングを授けましょう!!」
……私達は本番、体育館だから試合を見ることはできない。
マンガではほとんど男子の方しかやってないから、女子がどんな感じなのか……。
まあ、いっちょやりますか。