第8章 毒は不器用。
私は前の席にいる少女が手に持っている『あるもの』から目が離せずにいた。
「……どうしたの愛美ちゃん。その……手に持ってるやつ。……っていうか何処に隠してたの、それ」
理科の時間。今日は実験だ。
「実はこれ…あとで殺せんせーに飲んでもらいたいんですっ」
愛美ちゃんは朗らかに笑う。なんで、と聞こうとした時に丁度チャイムが鳴る。
「お菓子から着色料を取り出す実験はこれで終了!! 余ったお菓子は先生が回収しておきます」
必死にお菓子を守る殺せんせー。
「給料日前だから授業でおやつを調達してやがる。あれ買ったの俺らだぞ」
「地球を滅ぼす奴がなんで給料で暮らしてんのよ」
みんなから半分笑い、半分呆れの言葉が飛び出す。
すると、愛美ちゃんは緊張の面持ちで前へと歩き出す。殺せんせーはそんな愛美ちゃんに気付いたのか、ふっと顔を上げた。
「あ…あのっ、先生……」
後ろに隠していた三角フラスコをバッと出す。
「毒です!! 飲んで下さい!!」
目を瞑って愛美ちゃんはそう叫んだ。……なんてストレート。さすがの殺せんせーも戸惑い気味だ。
「……奥田さん。これはまた、正直な暗殺ですねぇ」
「あっ…あのあの……」
愛美ちゃんも戸惑いながら対応。
「わ、私皆みたいに不意打ちとかうまくできなくて…でもっ化学なら得意なんで、真心こめて作ったんです!!」
皆も戸惑い気味。