第3章 One Love
さっきふたりが入って行った診察室の前に着いた。
中からは大野さんのすすり泣く声と翔さんの『ごめんね』と呟く苦しそうな声。
一足遅かったか…
診察室のドアを静かに開けると翔さんに抱かれて泣いている大野さんがいた。
よく見ると翔さんの目も少し赤い。
好きな人が自分のせいで泣いてるんだ、翔さんだって苦しいはず。
ふたりともそんな思いしなくていいんだよ?
ふたりはドアの開く音でこちらに気がつき、急いで体を離した。
「大野さん大丈夫ですか?」
「えっ?あ、うん
どこもなんともないって…」
「体の方はマネージャーから聞きました
ふたりとも大事はないって
私が聞いてるのは心の方です」
俯いてしまった大野さん。
「……大丈夫だよ…」
「大丈夫な様には見えませんけど?」
「今だけだから…」
下を向いた大野さんから涙が落ちるのが見えた。
「大ちゃん泣かないでよ
大ちゃんが泣く必要なんてないんだよ?
そうでしょ?翔ちゃん?」
相葉さんに問われ翔さんが相葉さんを見る。
「…相葉くん?」
「いっくら鈍い俺でもさぁ、さっきの翔ちゃん見てたらわかるって」
相葉さんは翔さんに笑い掛ける。
「翔ちゃん勘違いしてるよ?
俺の幸せは大ちゃんに幸せになってもらうこと
大ちゃんと無理矢理恋人になりたいとかじゃないから」
「相葉くんなら幸せにしてあげられるよ」
「俺じゃ無理なんだよ」
相葉さんが苦笑する。
「翔さん、大野さんは誰とも付き合う気がないそうです
あなたと同じなんですよ
一人の人を一生涯想い続けるって決めてる
そんな強い想いを持ってたら大野さんはずっと独りでいることになります
そんなことさせていいんですか?
すぐそばにあなたがいるのに…」