第16章 リフレイン
〈ニノサイド〉
今、俺には気になっている人たちがいる。
『今』というよりも前々からなんだけど、その気になっている片方が最近やたらと心の声を漏らすんだよなぁ。
ほら、また今日も…
『翔ちゃん、しらす好きなんだよなぁ…食べさせてあげたい』
番組内のコーナーで流れたVTRの中での呟き。この声のトーン…無意識に口から出ちゃったって感じだよね。
見てるこちらからすると、大野さんの頭の中には常に翔さんがいるんだろうな、って思っちゃうんだけど、それを言われた当の翔さんは『うん、好き』なんて羨ましそうにVTRを観てるだけ…
恐らく大野さんは自分の気持ちに気付いてないし、そんなだから勿論翔さんだって大野さんの気持ちには気付かない。
いつになったらこのふたりは進展するのか…
いや、この超が付くほどの鈍感なふたりのことだから、永遠にこのままの関係が続いていくのではないか…
別にそれならそれでもいいのかな、とちょっと前まで思ってた。男同士だし?気が付かないなら敢えて気付かせる必要もないかって。
でも、なんか勿体ないなって、最近思うようになった。最良のパートナーがすぐ傍にいるのに、ただ時間だけが流れていって、いつか気が付いた時にはお互いお爺ちゃんになってた、なんてことになったらさ。
『折角出会えていたのに』って人生後悔しちゃうんじゃないかって。
それにね、あの人が『なんとか出来ないかな、あのふたり』って言うからさ、あの人がそう言うならなんとかしてあげようって思ったんだ。