第15章 Waiting for you
「そう、翔くんに…翔くんに必要って言って貰いたい…」
ビールジョッキを握っている俺の手を更に上から智くんが握った。
「は?どういう…」
「ほんと鈍いんだよねぇ、翔くんって…まぁ、そんなところも好きなんだけどね」
「好き?誰が…誰のことを…」
「俺が翔くんのことを」
っ⁉はっ?智くんが俺のことを好き?イヤイヤイヤ…あり得ないって…
「あの、智くん…酔ってるよ、ね?」
「うん、酔ってるよ」
「はは…だよ、ね…」
あぁ、よかった……んだよね…
…あれ?俺いま、ちょっとがっかりした?
智くんから視線を外し俯いた。
すると俺の手を握ってる智くんの手に力がこもった。
智くんは俺の手を握ったまま俺の隣に移動してきた。
「さ、としくん?」
顔をあげ智くんを見ると智くんのもう片方の手が俺の頬に触れた。
「酔ってるよ、翔くんに…もう、ずっと前から…」
「へ…」
こんな真顔の智くんなかなか見ることないんだけど…
俺のことをみつめる智くんの指先が俺の頬を撫でた…その視線と指先の動きに背中がぞくりとし、体がピクリと跳ねた。
「うふっ…翔くん、感じたの?今の表情すっげぇ色っぽいけど?」
え…感じた?色っぽい?智くん相手にそんなことあるわけ…
ニヤリと笑った智くんの指先が首筋を下りていく。
「んぁっ!」
思わず出た声に自分でも吃驚し手で口を塞いだ。
「んふっ、かぁわいい…翔くん」
俺のことを見る智くんの目は獲物をロックオンした野生の肉食獣のようだった。