第14章 君への想い
「あの…智くん?どこに行くの?」
智くんとふたり、勢いでタクシーに乗ったまではいいけど、どこに行くかは聞いてない。
「…俺んち」
「智くんの家?俺、智くんと約束してないよね?」
「…してない」
いつも言葉少ない人だけど、今日はいつもに増して少ないような…
しかもずっと不機嫌?俺何かしたかなぁ…
マンションに着いてリビングに入ってからも智くんはぶっきらぼうで
「そこ座ってて」
「うん…」
指示されるがままソファに座り大人しく智くんが戻ってくるのを待った。
「お待たせ…」
智くんは缶ビールとツマミを数品用意して戻ってきた。
「はい…」
缶ビールを差し出され受けとる。
「ありがと…」
智くんがプルタブを開けビールを一口飲んだ。俺もそれにならって一口飲んだ。
特に何かを話す訳じゃなくひたすらビールを飲む智くん。
ふたりで居られるのは嬉しい筈なんだけどなんだか気まずい…
なんで俺智くんに付いて来たんだろ…
居たたまれなくなった俺は立ち上がった。
「あの、智くん…俺そろそろ失礼させて貰うね?」
「え!あっ!ちょっと待って!」
俺の腕を慌てたように掴んだ智くん。
「なに?何か用があるの?智くん何も喋らないから」
「うん…ごめん、座ってくれる?」
俺はもう一度ソファに座った。
俺の腕を掴んだままの智くんはなんだか少し緊張しているような…