第13章 pray
俺、最低だ…あんなに智くんの幸せ願ってたのに、実際上手くいったら祝ってあげられないなんて。
これって妬みなのかな…恋人が出来た智くんを妬んでる?そんな小さな人間だったんだ、俺って…
「翔くん?どうしたの?何かあった?」
心配そうに俺の顔を覗き込む智くん…
「ううん、何もないよ?もう最終日だからね、ちょっと寂しくなっちゃったのかな」
「そっか…でも見に来てくれてるファンの人は今日が初めての公演なんだからさ、いつものように楽しくやろうな」
智くんが優しく微笑んでくれるんだけど、その笑顔を見ることさえ今は苦しい…なんでだよ…自分の器の小ささが情けなくて涙が出そうになるのを必死に堪えた。
「…翔くん、やっぱり何かあっただろ?」
「何もないってば…」
疑う智くんの目から逃れるために無理矢理笑顔を張り付けた。
「なんで嘘つくの?」
「嘘なんてついてないよ!」
しつこく迫る智くんから背を向けて歩き出そうとしたら手を掴まれ引き戻された。
「そんな顔のままでステージなんて立たせられないよ」
智くんの声が耳元で聞こえる…引き戻された体はそのまま智くんの腕に包まれてた。
「何があったの?俺には話せない?」
智くんの優しい声に導かれるように我慢していた涙が溢れだした。
「ご、めん…智くん…暫くこうしてて…俺にもどうしたらいいのか、わからない…」
俺の中にある気持ちを自分自身でも整理することが出来なかった…でも、こうして智くんの胸の中で涙を流したらスッキリするんじゃないか、そう思えたんだ…