第13章 pray
「俺と同じなんですよ」
「同じ?智くんも言ってた同類だって、それってどういうこと?」
「関係が近すぎて離れられないんです…だから気持ちを伝えて断られた後の事を考えると自分だけじゃなく相手にも辛い想いをさせるから、だから怖くて動けない」
智くん、ずっとそんな想いを抱えていたの?苦しかったよね…18年もの長い年月。あの夜の智くんの表情と声が頭の中に甦った。
「翔さん…大丈夫ですか?」
声が聞こえ反射的に顔をあげると心配そうな顔のニノと目が合った。
「なに?」
俺が不思議そうに聞き返したら苦笑いして
「翔さん、今にも泣き出しそうな顔してますよ?」
「え?」
「そんなに気になりますか?大野さんのこと…」
「なんか智くんの気持ち考えたら苦しくて…」
「優しいですね、翔さんは」
ニノが微笑みを浮かべる。
「そんなことないよ…あの時の智くんが忘れられないだけで…」
「あの時?」
「同志のニノだから話すね、俺じゃ智くんの力になれないし…イブの日さ、飲んでたらそのまま智くんの家で寝ちゃってたんだ…気がついたら智くんとふたりで雑魚寝してて、その時智くんが『俺のモノになってよ』って寝言言ったんだけど…その声と表情が凄く切なくて…だから智くんには幸せになって貰いたい」
「そうですね、俺も思います…ふたりには幸せになって貰いたいな、ってね」
「ふたり?ニノもよく知ってる人なの?」
「勿論知ってますよ?18年前から今まで続く付き合いですよ?相当深い仲でしょ?」
「てことは、俺も知ってる人?」
「はい…よ~く知っていますよ?それとね、翔さんが力になれないなんてことはないですからね?翔さんにしか出来ないこともありますよ?」
俺にしか?苦しんでる智くんに俺は何をしてあげられるんだろう…