第12章 抱擁
「あー、なんだかこの部屋あっついなぁ…私飲み物買いに行ってきますね」
ニノがわざとらしく大声をあげて部屋から出ていった。
「翔くん…」
翔くんの正面に立ち翔くんの目をしっかりと見つめると翔くんも恥ずかしそうに俺の事を見つめ返してくれた。
「俺、好きな人いるよ?ずっと前から好きな人…18年間誰よりも長い時間一緒に過ごしてる人…そして何にでも一所懸命でいっぱい汗かきながらダンスの練習しちゃう人」
そう言うと翔くんの瞳の輝きが増した。
「俺もいるよ?好きな人…18年間ずっと側にいて、羽が生えたように踊る人…」
恥ずかしそうに笑う翔くんが可愛くて愛しくて…手を伸ばし翔くんの腕を掴むとゆっくりと引き寄せそっと抱きしめた。
「あの、智くん…俺汗くさいでしょ?」
「ん?今の俺にはそんなことどうでもいいよ…翔くんは気になる?俺も汗くさいけど」
「ううん、気にならない…寧ろ嬉しい、智くんを近くに感じられて…」
そう言いながら俺の肩に顔を埋めるようにして抱きついてくれた。
「翔くん…」
「ん?」
翔くんが顔を上げて俺を見た。
「…好きだよ」
「…うん、俺も智くんのこと好き…」
翔くんの返事を聞き翔くんの唇に唇で触れる…啄むように何度か繰り返したあと唇を離すと『ふふっ』と翔くんが笑った。
「なに?」
「しょっぱい」
「ははっ、だね…でもいいんじゃない?汗をかいたあとは塩分補給しないとね?」
「確かにそうだけど…」
「もっと補給していい?」
はにかみながら頷く翔くん…
翔くんの顎に手を添えると翔くんはゆっくりと瞼を閉じた。
翔くんの後ろのドアの隙間から3人が覗いてるのが見えたけど、俺は構わず翔くんにキスをした。ずっと心配してくれてたんだろ?お詫びに幸せなふたりの姿見せてやるよ。
3人は笑顔で俺に向かって親指を立てて見せた。
fin