第11章 One　Step

「なんで？」

「どっちでも良かったから…俺が決める事じゃないと思ってたし、付き合おうと付き合わなかろうと俺にとって智くんの存在は一生変わらないから」

「翔くんにとって俺ってどんな存在なの？」

「ん～、きっとこの先も智くんを越える人はいない、不動の１位」

「不動の１位って…俺そんな大した人間じゃないけど」

「俺にしてみれば大した人なの、誰よりも尊敬してる…だから智くんの邪魔しちゃいけない、俺から望んじゃいけないって思ってた」

「そんなことないよ！俺にとっては翔くんが１番だし！俺が悪かったんだな…そんな風に翔くんが思ってたならもっと早く翔くんに気持ち伝えれば良かったんだ…翔くんは誰のモノにもならないって安心してたから」

「ふふっ、だってわかってたんでしょ？俺が智くんのこと好きだって、だから安心してたんだよね？」

「そう、なのかな…そこまで考えてなかった」

「智くんらしいよ…だからね敢えて俺も気持ち伝える必要ないなって、智くんが必要としてくれた時に側にいられればいいやって…今日、そう思ってくれたんだよね？」

「うん、翔くんとずっと一緒にいたいって思った…繋いだ手を離したくないって…」

「うん、俺も同じこと思ったよ、今までそんな風に考えたことなかったのに…たぶん長い時間何も考えずに自然の中にいて自分の正直な気持ちと向き合えたんだ」

「岡田の言う通りだったな」

「岡田くん？」

「今朝、電話貰ったとき自然に触れて素直になれってさ、素直になって翔くんに気持ち伝えろって、じゃないと俺が進めないからって…」

「そっか…岡田くん、そんなこと言ってたんだ」

「進めないってさぁ、もしかして岡田にコクられたの？」

「え、あ、まあ…そんなこともあった、かな…」

「安心してる場合じゃなかった～」

「でも、ほら、応える気はなかったし…」

「そういう問題じゃないの！翔くんの身に危険が及んでたんだよ？」

「危険って大袈裟な…」

「今日の事だってそうだよ、岡田の誘いに乗ってさぁもし襲われたらどうするつもりだったの？」

「岡田くんはそんなことしないよ」

「百歩譲って岡田はそうだとしても、男なんて皆下心ありありなんだからこれからは簡単に誘いに乗っちゃダメだよ」

「あのね？智くん、俺のことそんな風に見る人なんてそうそういないって」