第10章 always
〈潤サイド〉
今年もライブツアーの準備が本格的に始まった。
この時ばかりは誰よりも早く来て作業してるんだけどそれほど経たずに決まってやって来るメンバーがいる。
「おはよ松潤、今日も早くからお疲れ」
「おはよう翔くん、翔くんと違って早く来るのはライブの時期だけだから」
「ははっ、でも松潤のお陰で毎年いいライブが作れるんだからありがたい話だよ」
翔くんが誉めてくれた、それだけで嬉しくなる。
Jrの頃から翔くんは俺にとって憧れの存在で、それこそ昔は後ろを付いて歩いて『翔くんの一番のファン』なんて公言もしてた。
その『憧れ』が『恋心』に変わった時、俺は翔くんと距離を取るようになったんだ。
いつか横に並べるようになった時、気持ちを伝えようと思った。
なのにこの人は更に上を行ってしまっていつまで経っても追いつけない…
早く追い付きたいと思えば思うほど焦りが生じ、特にライブ期間は思い通りに進まなかったりするとイライラしてしまう。
それをフォローしてくれるのも翔くんで、相談に乗ってくれたり、時にはヒートアップしすぎてしまうスタッフとのやり取りに間に入って妥協案を出してくれたりする。
今日だって俺の事を気にして早く来てくれてるんだろうけど、そんなそぶりは一切見せない。
こんな事されてる内は横に並ぶなんてまだまだ先だ…
そんな事分かってるけどそれでもこの人を早く手に入れたい。
じゃないと誰かに先を越されそうで怖いんだ。