第12章 困惑と抱擁
私は…また、失うのか…?
関係のない人間まで…
───
足音。ジャーファルさんの…
その足音は、少し離れた場所で止まった。
『…紫水』
後ろから聞こえたのは、ジャーファルさんの声。
優しい声。
どうしてだろう。あの人じゃないのに…落ち着く。
『…あの…大丈夫ですか?』
あぁ、でも…やっぱり、あの人じゃない。
『…紫から…少しだけ…聞きました』
私はひたすら黙っているのに…
ジャーファルさんは、私の背中に話し掛けている。
『助けていただいて…ありがとうございました』
「別に…」
『…冷えますから、身体を温めませんか?』
どうして?
会って間もない私に、優しくするの?
「私に…構わないで…」
『女性が、身体を冷やすのは良くありません』
「ジャーファルさんには…関係ないでしょ」
『あの船に乗るまでは…確かに、関係ありませんでした。胡散臭い貴女の事なんて…
でも、今は違います。』