第9章 苛立ちと時間
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それを聞いて、ジャーファルさんに知らせに行った。
ジャ『魔導師なら、あり得るでしょ』
「嵐の中で?」
ピス『変だよね』
ジャ『調べてみましょうか』
ジャーファルさんは、私とピスティを連れて甲板の入り口に立った。
外は、雨が凄かった。
船も揺れるし…立っているのが、やっとだ。
ピス『こんなところに…人なんて立てないよ!!』
「でも、見たって…言ってた…」
ジャ『……いました』
ピス『えッ!?どこ!?』
「いないよ…ジャーファルさん?どこにいるの?」
ジャ『女性が、こちらを見てます』
ピス『何言ってるの!?』
「ジャーファルさんにしか、見えてない!?」
ピス『なんで!?』
予想だが、あっちの世界の地縛霊みたいなのだと思う。男性に対して、異常な恨みがあるとか…
ジャ『わかりました。待ってて下さい…今から行きます』
はぁ!?何言ってるの!?
ジャーファルさんの"行きます"は、"逝きます"って事でしょ!!
「ちょっ!!」
ジャーファルさんは、海の方に歩き出してしまった。
ピス『ジャーファルさん!!どうしたの!?』
「私が行く!!ピスティは、皆に知らせて!!」
ピス『わかった……気をつけてね』
そう言った時には、ジャーファルさんは船の縁まで行っていた。
──ドボォン!!
「ジャーファルさん!!」
私は、迷う事なく後を追いかけて飛び込んだ。
ピス『ジャーファルさぁん!!紫水ちゃん!!』
その言葉と嵐の音だけが、響いていた。