第8章 異変と経験
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夜…
月を眺めながら、建物の上に座っていた。
【何で、あの事を説明したんだ?】
「帰るって言っても、帰れないんだし…仕方ないじゃない」
【そうだけど…あの変態、嫌いだ】
「春水とどっちが嫌」
【こっち】
即答かい
【春水は、お前の事をわかってる。あいつは、下心丸出しみたいなのが嫌だ。しかも…】
「しかも…?」
【"アイツ"に似てる】
やっぱり…
【私は、紫水であって…
紫水ではない。
同じ生き物が、この世界に存在してはならない】
「マスルールさんも、そう思わない?」
さっきから、後ろの方に感じる視線…
それに気づいたら、紫はすぐに刀に戻ってしまった。
マス『あんな遠くにいるのに…よく気づきましたね』
「あんな遠くにいるのに、よく聞こえましたね。今日の監視役は、マスルールさんですか」
マス『ッス』
「本当に速いのね。あっちの世界の友達にも、瞬神なんて呼ばれてる人がいたけど…それに負けないくらい速いわ」
マス『そうッスか』
………………。
「恐くないの?」
マス『何がッスか?』
「化け物だとか、思わないの?」
マス『別に…シンさんも、充分化け物ッスから…』
…………。
「あははッ!!あー可笑しい」
自分の君主を化け物って…
あんまりいないでしょ。
マス『それに…』
「何?」
マス『花の匂いがします』
「花?」
マス『何の花かまでは、わかりませんけど…』
"えぇ匂いがする。花の香りみたいな…"
「そう…」
あの人にも言われたな。いつも、首筋に顔を埋めて…
そうして、夜がふけていった…